リーダーでありながら、そんな客観的テーマは不自然だが、折りにふれ、ふと、考えることがある。
まわりを見ると、素晴らしいバンドがファンの熱い懇願も届かず
あっさり解散していく中、今もなお続いているのは世界の七不思議だ。
この15年間は決して楽ではなかった。
さまざまな壁が立ちはだかり何度もめげた。
その詳細を書き始めたら一冊の本が出来上がってしまうので省くが、
精神的にも経済的にも、もはや限界とうなだれた夜は幾度もあった。
今だっていろいろある。
なかなか楽をさせてもらえない。
でも続いている。
なぜなんだろう?
その答えの片鱗が今年11月の浜松駅前ライブにあった。
冷たい雨が上がった夕暮れの駅前広場にサルサのメンバーが現れた。
その中に60歳をとっくにすぎた中原さんがいた。
その中に16歳の新人ケイトがいた。
このふたりはこの日に初めて顔を合わせている。
そんなふたりが共に音楽を奏で、なんの不協和音も生み出さず元気なビートを打ち出した。
ふたりは言葉を交わしていない。互いに自己紹介もしていない。
でもひとつのビジョンに向かって太鼓を叩き続けた。他のみんなもそうした。
それが大きな塊になって薄暮の駅前広場の中空に浮かんでいた。
そのときサルサの神髄を一瞬かいま見た。確かに見た。とても美しい塊だった。
15年が経てもサルサは進化の過程にある。いまなお到達点は見えない。
見えるのは、ライブ中にのみ顕現する、得体の知れない美しい塊だ。
それを目にするたびに涙があふれてくる。苦労がぶっ飛ぶ!!
その塊が、この私を、メンバーのみんなを、そして観客たちを虜にしているのだろう。
2008年末 かしわ哲
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